ダミ

日中は何時降りだしてもおかしくない
曇天が続きましたが、日没後は雲ひとつ無い
快晴となり、東の山の上には季節はずれとも
云える明月がぽっかり浮かびました。
さながら「妄執の雲晴れて 真如の月や
出でぬらん」といった風情。
折りしも長年の疑問が思わぬ処から
解ける出来事とシンクロいたしました。

・・・そんな大層なものでもありませんが、
どうぞ最後までお付き合いの程を願います。

焼き物の一ジャンルであり、技法でもあるものに
「染付け」というのがございます。白い磁器に
青い顔料で山水や連続模様を施したものです。
古伊万里などを思い浮かべて頂ければ
よろしいかと思います。

手順としては、素焼をした素地に呉須(ごす)と
呼ばれる、コバルトを含んだ顔料で絵付けし、
透明釉を掛けて本焼いたします。
絵付けの際、輪郭等を細い線で描くのを
骨描き(こつがき)と申します。そして、
その線で囲まれた空間を薄めの呉須で埋める
工程を「ダミ」と云い、その作業を行うことを
「ダミる」と呼び習わしております。

不思議な言葉と思っておりましたが、ロクに
調べもせず二十有余年、思いがけぬ処で
目にすることとなりました。さながら「盲亀の浮木 
優曇華の花」であります。

観世流シテ方の味方健師の「世阿弥特別講義」で
テキストとされています『世子六十以後申楽談儀』の
中に出てまいりました。その14条に「石河の女郎の
能は・・・。(中略)夏ならば、彩(だ)みて縫いたらん
かたびら、側へつんがうてよかるべき歟(か)。
水衣をちちと彩(だ)みたる体(てい)もよかるべき歟。」
とあります。頭注によりますと、「彩みて縫いたらん」
というのは「色糸で刺繍をした」という意味とのこと。

由緒ある言葉のようです。家に帰って念の為、
三十年お世話になっている広辞苑第二版補訂版を
ひもときますと、載っていました…。チャンチャン。
不精しないで早く調べれば良かったです。

=たむ[彩む](他四)いろどる。彩色する。だむ。
=だみ[彩・濃](ダムの連用形から)①金銀泥で
彩色すること。②彩潰(だみつぶし)の略。
=だみつぶし[彩潰]蒔絵の技法の一。彩刷毛
(だみばけ)・地塗筆で塗り潰すもの。

う~む、どうやら蒔絵の用語、彩潰⇒彩を
焼き物に転用したような印象です。
「ダミる」は活用として変なのですが、
ダムの連用形ダミが名詞化した後、
「メモする」が「メモる」になったのと同様の
運命を辿ったのでありましょう。

ひとつカシコクなりました。でも
迷妄の雲は厚いですなあ、私の。

旧暦[六月十七日 六月中大暑]

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント