そこにある危機

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雑誌「サライ」3月5日号の
特集は「能・狂言」。
現在の能界を俯瞰したり、
歴史的なことをコンパクトに
勉強できたり、能舞台を訪ねる
旅心を刺激されたり。
写真・図版も多くて楽しめます。

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中で感銘を受けたのが、シテ方観世流の
片山九郎右衛門師のインタビューです。
素敵な笑顔のお写真ですね。

藝そのもので京都の能界をリードしてこられた
ということは以前からもお聞きしていましたが、
戦中戦後のご苦労は一通りではありません。
大戦末期、空襲による延焼を防ぐ目的で
建物の強制疎開というのが行われ
(現在、御池通と五条通の道幅が広いのは
そのため)、元の観世会館も取壊されました。
せめて舞台の床板と鏡板だけは残したいと、
解体して大八車に載せ、ご家族で高尾まで
運ばれたそうです。

他にも幾多の危難を乗り越えてこられた
片山九郎右衛門師ですが、最大の
危機感を覚えたのは、能楽がユネスコの
世界文化遺産に登録されたことと
お話ししておられます。
600年続いているとはいえ、常に現在
只今に生きている藝能だと、身を以って
感じておられる師には〈遺産〉と呼ばれることに
違和感と危機感を持たれたのでしょう。

それにつけ思い出すことがあります。
一連の不祥事が発覚して大相撲協会の
姿勢が問われた時の新聞記事です。
これを機に抜本的に改革を行わなければ
大相撲も能や狂言のようになってしまう、
という結論でした。
能・狂言というのは様式やしきたりを
保存するだけが目的と思われる
向きがあるのだなと、苦笑した後で
少し淋しくなりました。

能は決して収蔵庫で眠っているような
ものではなくて、切れば血の出る
今を生きる藝能だと思います。
重要な無形文化財と世界的に認められた
こと自体は喜ばしいことかも知れませんが、
「遺産」というラベルを通して能・狂言が
見られることは果たしてどうなのでしょう。

旧暦〔如月二日 一月中雨水〕

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